info@formless.jp

SPring-8-IIの「100倍」は、見える対象と利用時期を確認して読む

放射光の明るさ、分解能、消費電力は何が変わり、いつ研究に使えるのか。

研究開発
ネットワーク機器が整然と並ぶサーバールーム
イメージ写真 / Unsplash

100倍になるのは、放射光の明るさ

理化学研究所は2026年3月、兵庫県佐用町の大型放射光施設SPring-8を改修し、SPring-8-IIとして放射光の明るさを現在の100倍以上にする計画を紹介した。SPring-8は電子を加速して磁石で進路を曲げ、約1.5キロメートルの蓄積リングと約60本のビームラインで実験に使う共同利用施設である。

ここでいう100倍は、施設内のすべての測定結果や研究速度が一律に100倍になるという意味ではない。

光の明るさが上がることで、試料や測定法によって、短い時間により細かい構造を調べられる可能性が広がるという説明だ。

分解能の目標は、50ナノメートルから1ナノメートル未満へ

RIKENは、電子ビームを細く絞ることで、空間分解能を現在の約50ナノメートルから1ナノメートル未満へ改善する見込みを示している。例として、数ナノメートル幅の次世代半導体の三次元構造を非破壊で観察することや、稼働中の燃料電池で化学反応を追うことを挙げている。

ただし、分解能の目標だけで観察できる試料が決まるわけではない。材料、測定するビームライン、試料の状態、必要な時間分解能が揃うかを課題ごとに確認する必要がある。記事の数字を読むときは、施設全体の仕様と個別の実験条件を分けたい。

性能を上げながら、消費電力は半分を目指す

SPring-8-IIでは、電子を回すエネルギーを8ギガ電子ボルトから6ギガ電子ボルトへ下げ、電子ビームの集束、入射器の更新、電磁石から永久磁石への置き換えによって、消費電力をほぼ半分にする計画とされている。これは現在の運用実績ではなく、改修後に達成を目指す設計上の説明である。

性能向上と電力削減を同時に掲げる点は、研究設備を評価するときの視点を増やす。しかし、実際の消費電力は運転モード、測定時間、周辺設備によって変わる。改修後は計画値と運転データを分けて検証する必要がある。

使える時期と申請条件も、成果の一部になる

RIKENは、SPring-8を2027年夏に停止して設備を更新し、SPring-8-IIの共同利用を2029年度に始める予定としている。一方、JASRIは2026年度もSPring-8の複数ビームラインで研究課題を募集しており、現行施設は改修前の共同利用を続けている。

研究者や企業が計画を立てるときは、期待する分解能だけでなく、募集時期、審査区分、ビームラインの対応範囲、試料を持ち込めるかを確認する。2029年度の開始は予定であり、実際の利用可能時期と性能は、改修の進捗と供用案内で再確認するのが安全だ。

参考資料

本文は、以下の公開資料を確認して編集しています。リンク先の内容と公開時点もあわせてご確認ください。

すべての記事へ

視点を、もうひとつ。