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介護の話を、個人の事情で終わらせない

介護離職を防ぐ制度変更から、組織が日常を設計する意味を考える。

組織
自然光と植物のあるオフィス空間
イメージ写真 / Unsplash

11万人という数字を、個人の問題にしない

総務省の2022年就業構造基本調査では、過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人は10万6千人だった。2017年の9万9千人から増えており、そのうち調査時点で無業だった人は8万3千人、有業者は2万3千人だった。

この数字だけで、すべての離職が職場の制度不足によるものだとは言えない。それでも、家族の介護が始まる時期を本人だけに任せれば、会社は突然、経験のある人を失う可能性がある。組織の課題は、困ってから特別扱いすることではなく、相談の入口を日常の中に置くことだ。

2025年4月から、会社の役割が明文化された

改正育児・介護休業法により、2025年4月1日から、介護離職防止のための雇用環境整備と、介護に直面した労働者への個別の制度周知・意向確認が事業主の義務になった。環境整備では、研修、相談窓口、利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知のいずれかを講じることとされている。

さらに、労働者が40歳に達する年度など、介護に直面する前の段階で制度や申出先、介護休業給付金を知らせることも求められる。制度を就業規則の奥に置くだけでは、必要な人に届くとは限らない。

相談が始まるまでを、組織の仕事にする

厚生労働省は、研修資料、面談シート、個別周知・意向確認書の記載例、相談時の対話例などをまとめた実務的な支援ツールを公開している。法令を確認するだけでなく、誰が相談を受け、どこまで記録し、上司と人事がどの情報を共有するかを決める材料になる。

現場の管理職が「話してよい」と伝えられるか、相談後に勤務時間や担当をどう調整できるか。使われた制度の件数だけでなく、相談までにかかった時間や、本人が選べた選択肢も見ていくと、組織の詰まりが見えやすい。

統計と法改正から、判断を急がない

就業構造基本調査は5年ごとの全国統計で、2022年時点の状況を示す。自社の年齢構成、雇用形態、勤務地、家族事情まで分かる資料ではない。また、法令上の周知を行っても、介護の負担や地域のサービス不足が解消されるわけではない。

会社が決めるべきなのは、制度があるという宣言で終わらせず、誰でも早めに相談でき、業務を引き継げる体制をどう維持するかだ。利用者を特定するための監視に傾けば、相談そのものが遠のく。必要な情報だけを扱い、本人の意思を確かめながら運用を見直したい。

参考資料

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